学校運営者の注意義務-“いじめ”への対処

Tracey Peers
April 10, 2015

日本では、“いじめ”が大きな社会問題になっています。今日では、パソコンや携帯電話を使ったインターネット上のいじめが増えているのも特徴の一つではないでしょうか。

実はここオーストラリアも日本と同じような状況にあるようです。ある調査によりますと、オーストラリアでは身体的ないじめは増加傾向にないものの、Cyber-Bullyingと呼ばれるインターネット上のいじめが増えているという結果が出ています。

今回は、こうしたいじめ問題に対処しなければならない学校の義務について考えてみます。学校の運営管理者は、生徒間で起こっているいじめを止めさせるため、適切な手段を取ることが重要です。学校には、監督している子どもたちを守らなければならない全般的義務があるからです。

ここで一つの例をご紹介しましょう。

2013年9月、NSW州裁判所は、校内で起きてるいじめ問題に適切に対処しなかった学校に対して、いじめを受けていることを学校に相談していた生徒に$162,207.34 の賠償金を支払うことを命じました(Oyston v St Patrick's College)。

Oystonさんは、3年間St Patrick's Collegeに通っている間、他の学生たちからいじめを受け続けた結果、心の病を負ってしまったことに対し、学校に過失(注意義務違反)があったことを訴えていました。 Oystonさんは学校スタッフに何度もいじめについて報告しており、学校側はいじめ問題が校内で起きている事実を把握していたはずですが、Oystonさんの相談に対して効果的に対処することを怠っていました。 実際のところ、St Patrick's Collegeには校内でのいじめに対処するため2つの指針が準備されており、何もしなかったわけではありません。しかし、学校の対応はその場しのぎで、体系立てられたものではありませんでした。つまり、学校はいじめへの対処を行ったものの、いじめを止めさせるには十分とは言えず、効果的な対応ではなかったのです。

そうしたことから、Oystonさんは、精神的疾患にかかってしまうほど、学校で受けたいじめで心に傷を負っていたことは明らかであったはずなのに、学校は注意義務を遂行しなかったということになります。ちなみに、学校運営者がスタッフに、校内でいじめがあるかどうか目を光らせているように指示するだけでは、学校で十分に対応を行っているとはみなされません。

残念ながら多くの事例において、学校スタッフは、生徒からいじめの報告を受けたときの適切な対処方法について、トレーニングを受けていません。

学校は、いじめ問題への対処方法をルール化して、校内でのいじめを阻止する措置を順にとることが求められています。また、学校の運営管理者は、いじめ問題担当の学校スタッフに対して、継続的なトレーニングを提供する義務があります。

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