セクシャル・ハラスメント
今月は、セクハラに関する日本とオーストラリアでの判例をご紹介します。
まずは、2015年2月26日に日本の最高裁が下した「言葉のセクハラ」に対する判決です。
大阪のとある会社で課長代理を務めていた男性2人が、部下である20~30歳の女性スタッフに対して「結婚もせんでこんな所で何してんの、親泣くで」「夜の仕事とかせえへんのか?」といった悪質な発言を繰り返したり、時折、職場で露骨な性的話題を口にしたりしていました。 女性スタッフの1人は、上司による言葉のセクハラを理由に、その会社を退職してしまいました。
最高裁は、様々な言葉のセクハラが1年余り続いたことを指摘した上で、2人を「30日間と10日間の出勤停止処分+係長に降格」とした会社の処分を妥当と判断しました(処分無効を求めた2人の訴えを退けた)。 また、2人について「強い不快感や嫌悪感、屈辱感を与え、執務環境を著しく害した」「課長代理としての責務に反して、非常に不適切な行為をした」と述べています。
こうした最高裁の判決からも、体への接触の有無にかかわらず、性的な言動で相手を不快にさせてはいけない、ということは明らかです。 次にオーストラリアでのケースです。
オーストラリアでは性差別禁止法によって、会社や教育機関、物品・サービス・宿泊施設提供などのあらゆる場面において、相手に性的嫌がらせをすることを禁止しています。
2014年8月、豪州連邦裁判所は、会社内ではなく、従業員が仕事関係で出向いた場所で起こしたセクハラについても、雇用主(会社)に責任があるという判断を下し、その結果、セクハラ被害にあった女性は、賠償金としておよそ$500,000を受け取りました。
この判決では、加害者である男性スタッフが正社員ではなく、エージェントを通して雇われた“契約”社員であったことに加えて、通常の勤務時間や勤務地以外で起こった従業員(契約社員を含む)のセクハラ行為にまで、雇用主の責任の範囲が及ぶとの判断が注目されました。
会社でセクハラ被害にあっていると感じた場合は、躊躇せずに社内の担当者に報告、あるいはAustralian Human Rights Commissionや弁護士に相談しましょう。また、上記判例のとおり、従業員によるセクハラ訴訟では会社側も大きな被害を被る場合がありますで、経営者は、モラルある職場環境づくりを常に心がける必要があるでしょう。