“砂漠の勇者”俳優に3,300万ドル?! 前編

Tracey Peers
August 4, 2015

知ってると知らないでは大違い!
日豪プレス 法律相談室

第10回
“砂漠の勇者”俳優に3,300万ドル?! 前編

イギリス人俳優主演の映画『Mad Max 4』が公開されましたが、同シリーズといえばやはりオージー俳優のメル・ギブソンが有名ですね。シリーズ第1作『Mad Max』(1979年)の主演をきっかけに、当時21歳だった彼は、V8エンジンの加速度級にハリウッド界の名声と富を手に入れました。

このメル・ギブソンの俳優としての存在が、別の俳優の賠償請求において「基準」とされた例があります。『砂漠の勇者(原題:The Lighthorsemen)』(1987年)という映画で主役を演じたジョン・ブレイクという俳優のケースです。

端整な顔立ちで類まれな魅力を持ったジョン・ブレイクは、当時よくメル・ギブソンになぞらえていました。1986年12月1日にSA州西部での撮影を終えたジョンは、パーティーに参加した後、長距離を運転してアデレードまで帰る途中で事故に遭い、重症を負いました。映画の中でなく現実社会で起きたこの自動車事故は、別の2台の車も巻き込んだ大事故でした。

事故で閉ざされた俳優としてのキャリア

事故によるケガのせいで、ブレイクの映画俳優としてのキャリアは閉ざされてしまいました。ブレイクは事故で負った重症に対し、ハリウッドで有名俳優になるチャンスがあったことも踏まえ予測される将来の所得損失に対して、自動車をカバーしていた保険会社を相手に賠償請求を起こしました。この賠償請求では、大きく分けて以下の2点について議論が重ねられました。

1 事故に関わった車の運転手の間、過失責任(事故原因)の割合をどのように分けるか

2 賠償金額はいくらになるか

所得損失額の算出

保険会社はオーストラリアの映画界における俳優の一般的な収入額に基づいて、ブレイクの将来の所得損失額を算出。この金額には、もし事故に遭わなかったとしても、何らかの理由で将来俳優業を続けられなくなる可能性(例:誰しも病気になるリスクを抱えている、など)に対する減額分も含まれています(賠償金算出時の一般的プロセス)。事故以前、実際にブレイクが稼いでいたのは年間約6万ドルでした。そこで、もし彼がケガをせず、オーストラリア映画界で俳優業を続けられていた場合、年収は30万ドルまで上がると見なされました。

それを基に実際の賠償額を算出する際、いくつもの関連要因が考慮されます。次回のコラムでは、この点についてお伝えします。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として24年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。


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